西垣ぽん太のブログ

みんなの日記

ラーメン用心棒本号春の俳句祭を振り返る

去る令和2年3月23日から同31日にかけて、Twitter上にてラーメン用心棒本号主催の俳句大会『春の俳句祭』が開催された。ラーメン用心棒と言えばいわゆる二郎系のラーメン店で、都内にいくつか店舗を構えているが、そのうちの本号は東京大学弥生キャンパス(本郷キャンパスの隣)の目の前にある。今回の大会は、用心棒と春にまつわる句をTwitter上で募り、上位10作に選ばれた作者にはラーメンかまぜそばの好きな方が副賞として与えられるというものであった。

副賞の存在もあってか応募は盛んに行われ、最終日だけで9句が出されるなど、公開アカウントによる投稿だけで合計30名46句を数えた。

当稿ではその中から特筆すべき句を紹介し、春の俳句祭がどのような大会だったかざっくりと伝えたい。(アカウント名は令和2年4月12日時点のもの)

 

 

 

  • ラメーンんゴリゴリのナンすすりたい /たく

今大会を語る上で欠かせないのがこの怪句である。何度も意味を理解しようと試みたが、全く意味が分からない。今大会は用心棒にまつわる句を募集しているのに、ナンはどこから出てきたのか?あのインドカレーのナンか?仮にそうだとして、ゴリゴリのナンと形容できるナンがこの世に存在するのか?ナンをすするとは?1つとして分からない。

そもそも、Twitterという推敲の容易な、そしていざとなれば投稿し直せるフォーマットであるのにも関わらず、「ラメーンん」という崩壊している文字列は何なんだ。

 

また、この句についてはとある疑惑が立っている。まず次の句を見て頂きたい。

桜咲きガリマヨマシマシすすりたい /rin

これはたく氏の句の2時間半前に投稿された句(rin氏の句が全応募のなかで最初の投稿で、たく氏の句が2番目の投稿)であるが、完全に下五が一致している。「すすりたい」なんてのはなかなか短時間の間にかぶりが出る文言ではない。たく氏がrin氏の句からパクったことも考えられる。(パクってはいないと信じているが。)

ただ、ここで疑問となるのは、仮にパクりがあったとしても、「すすりたい」はパクるほどの魅力のある言句ではないということだ。普通であれば、パクるにせよもう少しパンチラインらしい部分をパクるのではないだろうか。しかしこの句を詠んだのはたく氏。我々の常識は通じない。

 

 

 

トッピングの大盛りを指す「マシ」のみで構成されたこの句。6・8・6という音数もあってか、ボリューミーな印象を受ける。器からはみ出るほどの大盛りを表すための字余りだろうか。ここで、同じツイートに付されたタグを見てみる。

#マシの文字で散る桜の葉をイメージ

違った。というか同じツイート内で解説を書くのは普通にやめた方がよくないか。自分の表現に矜恃を持ってくれ。

 

 

 

  • ガーリックベジタブルオイルソイソース /ゲコ太@うちゅう

外来語オンリーという見た目に圧倒される。発音してみても、濁音が多く、重量感のある響きとなっている。豪快な句。そう言えば春要素はどこに行った。

 

 

 

  • 桜散る油も散る汗ほとばしる /びしゃんころーりー

動詞の終止形が3つ連続することで、歯切れが良く、リズムを感じさせる。また、「散る」という動詞により結ばれた桜と油、液体という共通項により結ばれた油と汗という連関性も面白い。

しかし、少々気になる点がある。この句の1分前にびしゃんころーりー氏はもう1句投稿しているのだが、その句のことだ。

桜散る俺は油と汁すする /びしゃんころーりー

そう、ほぼ一緒なのである。というか思いついた句を厳選せず片っ端から投稿しているのではないか?そもそもびしゃんころーりー氏は1人で合計9句投稿している。執念がすごい。

 

 

 

  • ニンニクで人も病気も追っ払え! /とともす

「!」って入れちゃうのが可愛い。

 

 

 

  • 花見前……っ関係ねえよ!!「全マシで!!!」 /びしゃんころーりー

再びびしゃんころーりー氏。締め切りの40分前にもすかさず最後の1句を滑り込ませた。この句では「!」はただ挿入されているだけではなく、2つや3つ連ねられ、強調されている。また、「…」や「っ」からも躍動する感情が伝わってきて、入賞を希求する思いが滲み出ている。一体その情熱はどこから来るんだ。

 

 

 

以上のような句が印象的であり、今大会を象徴していたように思われる。今回紹介しきれなかった秀句も多くあった。次回の開催も期待したい。